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#02「プロの感性とセンス」 池田 裕 (HMS役員 | (有)エーエムワークス パートナー)
サービス業において感動は偶然または演出の結果起きたりしますが、ホテルではスタッフの感性と専門的なスキルの仕事による結果とも言えます。職場には各々プロがいて、其々の場所でゲストをお迎えする為にまた次なる要求や感動、楽しい思い出作りのお手伝いを思い描いて準備しています。
この業界もIT化が進み、宿泊、会計、調理等の各システム、AIツールでの業務でより効率且つ迅速化を目指してきました。もう一方では、人間が成せる情緒的な思考で“感じる気持ちとプロのセンス”があってこその仕事の醍醐味を感じる事も大事にしてきました。感性は相手の気持ちや周りの状況をくみ取る感覚、センスはその感じたものを相手に具体的に表現する能力とも言えます。画家は美しい景色を見て絵画にする。音楽家は自分の感じたものを音や曲で表現し感動させるセンスを持っています。
サービス業界では有形と無形のパフォーマンスがありますが、昨今、プロの感性を持つスタッフが少なくなってきた気がします。質の高いサービスを提供する上で大前提には経営者の理念やゲスト・従業員への理解も重要です。しかし人材教育や育成の方針はあるが計画性や実行性が伴わない場合も少なくなく、マニュアルだけで安心している施設も多いように思えます。コロナ禍以前からの課題でもある従業員定着や人員不足に悩み、プロ意識不在の職場も多いと思います。離職の要因には、様々な理由はあると(給与待遇、人間関係、コミュニケーション不足、仕事への理解不足等)思いますが、多くの若年中堅スタッフはやりがいのある仕事も求めています。
AI技術の活用も進み、また色々な文化習慣・言語・価値観を持つゲストや従業員が入り混じる環境変化の中であってもマネジメントやスタッフ共々、忘れてならない事は、“マニュアルだけの動作で上部だけのおもてなし”に留まらず、ゲストが真に求めている目的や欲求、気持ちを見失わない “日本流プロフェッショナルな感性とセンス”を磨くようなホスピタリティ精神であって欲しいものです。