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#04「マインドフルネス瞑想のすすめ」右京 幸雄 (HMS役員 | 元・辻調理師専門学校 財務部長)
新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが第5類に変更され、世の中にまた日常の喧騒が戻ってきた。仕事や職場でストレスを抱えるビジネスパーソンが増えそうである。近年、社員のメンタルヘルス対策のみならず業務のパフォーマンス向上や人間関係改善を目的に「マインドフルネス瞑想」を取り入れる企業が増えているという。なかでもグーグル社はよく知られている。
マサチューセッツ大学医学部のジョン・カバットジン博士は著書『マインドフルネスストレス低減法』(春木豊訳 北大路書房 2007年) においてマインドフルネス瞑想法の実践を提唱している。グーグル社では、同社のエンジニアであったチャディー・メン・タンがマインドフルネスをベースに開発した研修プログラム「サーチ・インサイド・ユアセルフ」を導入している。
マインドフルネスとは「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」と定義されている(日本マインドフルネス学会、2013)。
私たちの頭の中では、さまざまな雑念が浮かんでは消えていく。昨日観た映画のストーリー、レストランで食べた料理やワインの銘柄、明日行くコンサートのこと、のみならず過去を気に病んだり、起こってもいない将来に不安を抱えたりを常に繰り返している。これはデフォルト・モード・ネットワーク=DMNと呼ばれる脳の回路による活動で、これが高じるとうつ病になることもある。
この心ここにあらずの状態をマインドフルネス瞑想によって、今この瞬間の感覚に意図的に注意を集中する(たとえば呼吸中の身体の感覚に意識を集中する)ことで、DMN活動によるストレスから自己を開放することができる。
マインドフルネス瞑想のやり方にはいくつかの方法がある。呼吸のほか、食べ物や飲み物の色や香り、口に含んだ瞬間の味わいや食感を感じとる「食べる瞑想」や「飲む瞑想」もある。特別な場所や道具は必要ない。自宅やオフィスで気軽に取り組むことができるが、時にはメディテーションルームのあるホテルに滞在し、非日常の空間で内側から湧き出る自己の感覚と向き合ってみるのも悪くないだろう。