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#13「知識と情報の違い」碓井 将夫 (HMS役員 | 元・流通科学大学 人間社会学部 教授)
経営学の泰斗、P.F.ドラッカーは、「知識とは、個人や組織が何らかの成果をもたらすような行動を可能にし、何かあるいは誰かを変えるものである。知識とは何かを変えるものであることを認識するだけでも、何かが変わっていく」(新訳「新しい現実」)という。さらに、「知識は、本の中にはない。本の中にあるものは情報である。知識とはそれら情報を仕事や成果に結びつける能力である」(「創造する経営者」)ともいう。
では、情報と知識はどう違うのだろうか。大学の経営学部や大学院の経営修士を得ただけでは、実際の経営はできない。つまり、それは、経営について必要な「情報」を身につけたということだけだ。実際に経営者として成果を出すためには、組織運営の実務、つまり技能を培う必要がある。
どのような仕事でもこのプロセスは変わらない。必要な情報や基本的な技能を修得することにより、つまり、単に「学んだ」段階から「会得」した段階に到達することにより、さらに実務を通じその能力を確実なものにして初めて、「知識」を得たことになる。換言すれば、知識とは、情報を知識へ体系的に変換することにより得られるものであり、また、その体験を通した実務のことである。
どのような組織、職務にも、情報と知識の違いがあり、それが仕事の質、成果を決定する。したがって、成果をあげるためには、初歩的なことだが、自らの仕事の情報と知識を整理し、見直すことにより、より成果を確実なものとすることができる。