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#07「ホスピタリティとおもてなしについて考える」島 雅則 (HMS役員 | 大阪成蹊大学 国際観光学部 准教授)
コロナ禍が終息に向かい、ようやくインバウンドのリバウンドが連日ニュースで報じられるようになりました。訪日外国人たちが日本のおもてなしを語る時、タクシーの自動ドアや超高機能な自動販売機といったハード面 (実はこれらが日本の工業製品のガラパゴス化の張本人なのですが)から始まり、サービス面のきめ細やかさに至るまで枚挙にいとまがありません。そこで、その和のおもてなしと洋のホスピタリティの違いは?という素朴な疑問についてそれぞれの本質について考えてみます。
人の願望認識度のフレームワークのひとつに、ニーズ、ウォンツ、そしてホープがあります。ニーズとウォンツは認識が可能である一方、ホープはその潜在意識にもない願望であり、満たされることにより超ド級のCS(顧客満足度)を生み出します。いわゆるロイヤルカスタマーを獲得する源泉であり、その好事例は多く紹介されています。
主要な外資系ラグジュアリーホテルを見ていますと、計画された、ある意味分かり易くマニュアル化された"サプライズ"で一気に顧客のマインドシェアを上げる事例が多い反面、日本の究極のおもてなしと評されるケースは、時間をかけてじわっと顧客の涙腺を緩める力を持っている場合が多く見受けられます。ただこのパワーは、個人のパーソナリティ(個性)や属人的な心や気持ち、感情に依存しており、マニュアル化は難しく量産することはできません。
しかしながら、このマインドは誰もが資質として持っているものであり、ホスピタリティ産業で働く皆さまには、それが積極的な行動となり、表現されない限り、原則として意味を成さない、つまり売上に繋がらないということは常に意識してほしいと思います。
最後に、あの東日本大震災の時にほぼ終日放映されていたACジャパン(公共広告機構)のCFで、ご記憶の方もいらっしゃると思います。
「こころは」
だれにも見えないけれど
「こころづかいは」
みえる
「思いは」
見えないけれど
「思いやりは」
だれにでも見える
宮澤章二「行為の意味」より