column
column
#03「ホスピタリティ産業を育てていく時代に」石橋 仁美 (HMS役員 | 大阪学院大学 経営学部 准教授)
2023年5月8日から、新型コロナウィルス感染症が5類に分類され、街には一気に活気が戻ってきました。各地のお祭りやだんじり、パレードなど、約3年ぶりに開催され、外国人旅行者も日に日に増えています。私たちを遮っていたパーテーションも外され、結婚式やパーティーも開催され、制限なしの開放感を楽しんでいます。
しかし、せっかく街が活気づき、観光など人の流れが始まったにも関わらず、残念なことに人手がないという問題が起こっているのも事実です。GW明けに久しぶりにレストラン訪れた人気のレストランが、働き手不足のためランチ営業のみになっていました。また、あるウエディング施設では、会場は空いているが、担当するプランナーがいないために売り止めになっているとのこと。コロナ禍で、従業員を減らした結果、この事態になったとも考えられます。
コロナ禍以前より、人材不足は日本の人口減少と共に問題視されていました。厚生労働省労働経済動向調査(令和5年2月)でも、特にサービス産業における人手不足はその深刻さを増していることが判ります。なぜそこまでサービス産業は不人気なのでしょうか。休日に仕事をしなければならない、時間が不規則など様々理由はありますが、そのひとつに、この、サービス産業とくに、ホスピタリティ産業が顧客に提供するものは、「モノ」だけではなく「心」が必要なため、一朝一夕には人が育たないため、「人手不足」というより、「人材不足」なのではないでしょうか。
「相手を思うあたたかい心」が求められるホスピタリティ産業のマインドは、教科書から文字で学んでも簡単には身につきません。知識を基本として、現場から学び先輩から学んでいくものだと考えています。したがって、これからのホスピタリティ産業には、CS(Customer Satisfaction)顧客満足はもちろんですが、ES(Employee Satisfaction)従業員満足を重要視していくことが求められると感じています。(特に大学教員として、「お客様のために、お客様の笑顔のために!」とホスピタリティ産業を選んだ学生を送りだす身としては、従業員満足度を高め育てていく姿勢を、業界でたかめていただきたいと考えています。)そして、私たち顧客の側も、「お客様は神様」ではなく、サービスに対する価値を正しく評価し、対価を支払い、顧客と働き手が、お互いへのリスペクトをもって接していくことで、人材を育てることに寄与できるのではないでしょうか。
「目も前の人が、あなたの大切な人だったら」この思いは双方に求められるのです。